円筒分水かわうそ探検隊

円筒分水を訪問している記録です。ツイッターやインスタの Kawausobunsuiをフォロー頂くとアップデート時にご案内が流れます!

天津円形分水(大分県宇佐市中庄)

敷地内に伸びる水路のデザインもかっこいい円形分水

周囲の約15m四方がきっちりとコンクリートで固めてあり、本体から伸びる敷地内の水路の直線や、曲線の曲がり具合も含めて全体がッコイイです。

 

(左)東への分水は直角にまがり (右)南への分水はやはり直角にまがったあとゆるいカーブで西へ

上から見るとこんなかんじ。北西に向けて伸びるまっすぐな溝がまたかっこいい。

 

訪問した時はまだ注水時期でなく、麦の季節でした。円形分水の敷地内水路にも雑草が生えていましたが、流水時にまた訪問したいと思います。

【取水】

取水は駅館川(やっかんがわ)より平田幹線用水路の糸口線と天津線経由。

つまり2021年(令和3年)に『世界かんがい施設遺産』に登録認定された「宇佐のかんがい用水群(平井井路、広瀬井路)」の一部をなす用水路(平井井路)経由ということで、天津の円形分水も含まれています。

世界かんがい施設遺産 | 宇佐土地改良区

 

どこで地中にもぐらせてサイホンで溢流しているのかはきっちり追えませんでしたが、宇佐土地改良区による図からすると、伊呂波川を越えて西に進み途中で円形分水に向けて地中へ管に送られるのではと想像しています。

伊呂波川。このちょっと上流で天津線は川とクロスする。

 

【用水】

円形分水からの水は中庄や天津地区の農地を潤しています。

 

大分の6つの円筒分水の内4つはこの宇佐市にあります。駅館川などの扇状地の肥沃な農地を長い歴史に整備された用水が潤すことで有数の米どころとして美味しいお米が作られています。

コシヒカリヒノヒカリなど。特にヒノヒカリは、その作付面積は全国でNO.1!

 

次回は世界かんがい遺産のさまざまなポイント、平田頭首工取水口、四寸分水、大突別分水や藤ヶ谷水路橋などをめぐったり、棚田をみたりで宇佐を楽しみたいと思います。

 

 

歴史

平安時代後期(12世紀)に宇佐神宮の大宮司であった宇佐公通(うさのきんみち)により開削が始まった平田井路はその後の時代に延伸し、遠浅の海の埋め立ても含めた新田開発も進み、1924年には農地は約1100haまで拡大しました。

1964年(昭和39年)に国営駅館川総合開発事業が始まり16年間をかけてため池を結ぶ用水を整備し、それと並行する形で大分県が大規模な圃場整備事業を行ってきました。その事業を経て現在の平田幹線用水路は全長25.6km、受益面積1546haとなっています。

従来から保水能力の小さい駅館川の水の効率的利用の為、平田井路には上乙女、天津、葛原、赤尾の4つの地区の円形分水をはじめ多くの分水施設が作られました。

円形分水は全てコンクリート製でいずれも直径が約6m程度、越流部の円筒の内側にスリット付きの円筒を備えた三重円筒で形成されています。これらの4つの円形分水は農地の四角形の四隅を形成するように配置されていますが、このように円形分水を格子状に複数配置したのは、複雑な水路網の設計にあたって流入流量に依存しない正確な流量配分を行うことが必要だったことが理由だと推察されます。

 

世界かんがい施設遺産 | 宇佐土地改良区

 

データ

名称:天津円形分水
住所:大分県宇佐市中庄
方式:全周溢流式 3方向分水
水源:駅館川(やっかんがわ)より平田幹線水路の天津線経由
用水:中庄、天津地区
竣工:1960年代
管理:宇佐土地改良区
登録:世界かんがい施設遺産:宇佐土地改良区