円筒分水かわうそ探検隊

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御宇田(みうた)井手円形分水(熊本県山鹿市)

取水した水を3割元の川にもどす遠慮深い円形分水

熊本県山鹿市御宇田井手(みうたいで)円形分水に先月行ってきました。
青空に菜の花が映えて一気に春を感じた1日でした。溢れ落ちる水を見てると時間を忘れます!

上内田川に設けられた御宇田堰から取水して、高橋、辺田目(へため)経て一つは南流して笹本方面より藤井に、もう一つは西流して下御宇田から方保田のほうを潤します。

流れ落ちる均一なしぶきと穏やかで流れが無いように見える表面の対比がほんとうに美しいです。流れ落ちるところは円形型ですが、全周の円形ではなくて鍵穴のような前方後円墳のような、かわいい形。「扇形」的ですが、ここでは正式名を尊重して円形分水としています。

 

あーなんかぼけっと見てたい平和さです。

この分水、下流に向かって真ん中~右側に7割くらいが溢水して水路を流れて行き、残り3割くらいが左側に。この3割はすぐ上内田川にもどされています。遠慮しながら受け取って少し返す、みたいな。渇水の時に全部取り込まない、という下流の事を考えた作りになっています。水を大事に公平に使おうという円筒分水の精神ですね。

天気がよかったので北側には八方ヶ岳(やほうがたけ)や福岡県、大分県との県境の三国山らしき山並みも見えて気持ちがよかったです。三国山登山や宿ヶ峰尾峠方面のツーリングも楽しそう。

(左)円形分水の下流から望むと背後に八方ヶ岳(1052m)、三国山(994m)らしき山が。

(右)増水時に上内田川からの逆流を防ぐ堰。その奥に30%を川に戻す水路が見える。

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円形分水が潤す流域は福岡県と大分県に接する山鹿市の南東部に位置する鹿本町穀倉地帯水稲のほかすいか、菊・メロンの栽培が盛んな地域でもあります。

お米はまず熊本県で育成された「森のくまさん」。「ヒノヒカリ」と「コシヒカリ」の交配品種で「森の」都「くま」本で生「さん」されたお米、という意味命名だとか。水と寒暖差に恵まれとても美味しいお米だそうです。そのほか「まさんの力」「にこまる」「あきげしき」「ミズホチカラ」「北陸193号」「わさもん」「やまだわら」「くまさんの輝き」「あきだわら」なども。もち米は「峰の雪もち

熊本県すいか生産日本一で年間5万トンにも達する生産量。ちなみにトマトとカリフラワーも全国トップ。山鹿市は県内ですいかの出荷量トップ3に入る大収穫地です。「夢大地かもと」のブランドで出荷されています。スーパーで熊本すいかをみかけたら、御宇田の円形分水を思い浮かべる事になりそうです。

その他果物では、いちごは熊本県オリジナル品種の「「ひのしずく」「ゆうべに」紅ほっぺ」「とよのか」など、みかんは不知火(デコポン)などが有名です。

 

この御宇田井手は文化庁が定める「日本遺産」の一つでその構成文化財の一つとして登録されています。

「日本遺産(Japan Heritage)」はその地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーをとして認定し、ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の様々な文化財群を総合的に活用する取組とのこと。

世界遺産登録や文化財指定はその保護が目的な一方、日本遺産は保護のためというより、地域に点在する遺産を「面」として活用・発信し地域の活性化を図るという目的の違いがあるのだと。

ということで菊池川流域の日本遺産指定は「米づくり二千年の歴史」という視点でのものだそうです。

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再訪して日本遺産のポイントもじっくり歩いてみたいです。

 

歴史:円形分水のある御宇田地区一帯は約千年前、藤原氏一族の藤原光重が伊勢国三重県)からここに下向し 、この地方をはじめて開拓したところといわれていま す 。御宇田氏系図によれば、九二五年(延長三)「初めて肥後国山鹿郡御宇田を賜り御宇田氏を称す」とあります。
御宇田氏がこの地方に残した最大の恩恵は御宇田井手の開削だと言われています。この井手は上内田川の水を津袋で堰せき止め、高橋を経て辺田目(へため)に至る約2キロメートルに および、辺田目の松本堰で二つの流れに分かれています。一 つは南流して笹本方面より山鹿市藤井に流れ、もう一つは西流して下御宇田から方保田に流れており、受益面積は津袋地区が約16ヘクター ル、来民地区が185ヘクタールとなっています。熊本県には加藤清正が整備した水利施設が多くありますが、この御宇田井手はそれよりずっと古い県最古の灌漑用水事業という事になります。

その御宇田井手が昭和になって整備されコンクリート製の円形分水施設となりました。

データ
名称:御宇田井手円形分水施設 

   (形は完全円形ではないが、正式名称は「円形分水施設」となっている)
住所:熊本県山鹿市鹿本町御宇田
方式:溢流式
水源:上内田川より御宇田堰経由
用水:2分水。御宇田の田畑への農業用水(+河川維持用水(下流の利水を含む))
竣工:19XX年(昭和XX年):調査中
管理: 山鹿市、山鹿土地改良区(山鹿・鹿央土地改良区・内田川地区土地改良区)
登録:2017/4/28 菊池川流域日本遺産「米づくり二千年の歴史」の構成文化財

 

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