大阪狭山市の狭山池博物館の特別企画展『土木遺産展・水をはこぶ』に行ってきました。音無井路第十二号分水がポスターに採用されているのを知り、これは!と。
狭山池は大阪府の南部、大阪狭山市にある日本最古のダム式ため池で日本書紀や古事記にも登場します。狭山池博物館はその1400年の歴史の土木遺産を保存・公開・活用する場として2001年にオープン。
これまでも土木遺産展として色々な企画展が開催され、ダム、トンネル、橋梁、道路と来て今回の『水をはこぶ』展となっています。
河川や湖からの水利に焦点をあて、時代と利水と技術、技術/遺産の保護と継承、水と親しむ環境の3つの視点から展示解説。円筒分水はその技術のひとつとして紹介されていました。展示の中には大分県の音無井路第十二号分水、奈良県の吉野川円筒分水などが取り上げられてました。
ダムや橋梁、道路などと比べると、『水をはこぶ』ものはより小ぶりの施設が貯水・用水・排水の一連のシステムとして繋がっている感覚が強いです。それだけに水源から最後は海まで、水は様々な人の営みを通り、またメンテナンスも地元に密着して流域ごとになされてきているのが魅力だと思いました。貯水・用水・排水の一連のつながりを知り、その地の歴史や文化やそこでの暮らしを知って楽しんでいきたいなと思いました。
それからまた、直線的な形のものが多い大物の土木遺産に比べ、円筒分水の丸い形は自然と溶けこみほっとさせてくれるデザインであることも魅力なのだと改めて思いました。その形の面白さと、それが風景にとけ込む様子を楽しみたいと思いました。
特別展のあとは常設展。これがすごかったです。狭山池の歴史を辿りながら水利がどう発達してきたからを説明した濃厚なもの。池の堤を高さ15m、幅62m、厚さ50cmのケーキのように切り取って、樹脂で固めてそのまま屋内に展示するという、驚きのものが圧倒的でした。
推古天皇の昔(飛鳥時代616年)から昭和の改修(1964年)までの間の各時代の改修の歴史がはっきり見えました。
その他、奈良時代の堤つくりの技術、木製の樋や樋管、工事道具、中世の石製の樋管など、想像以上に進んだ技術に驚かされました。明治から昭和まで使われていた取水口の数十メートルある取水塔をそのまま建物中に保管してるのもすごい。
(左) 江戸時代の取水樋 (右)明治~昭和の取水塔
最後はカフェテリアでうわさの「ため池カレー」を。野菜たっぷりで美味しかったです。
円筒分水派としては、ちょっと改修し「円筒分水カレー」にして食べました。
施設の建物は安藤忠雄。建築自体も楽しめました。
入場料は無料というのも驚き。お勧めです。