千葉県内で最も南にある円筒分水
ひとつまえの記事の嵯峨志から水をもらって働く円筒分水です。
南房総に向かい館山バイパスを下るとヤシの木(ワシントンヤシ)が出迎えてくれます。暖かい気候であることがわかります。1980年代のいわゆる「リゾート法」以来、海岸近くはスペインのコスタ・デル・ソルやフランスのコート・ダジュールのような海洋性リゾートのムード漂う街づくりが行われています。一方、内陸部は落ち着いた昔ながらの田園風景と丘陵が続く、これがまた良い景色です。
そんな館山市にある滝の谷(たきのやつ)分水工は千葉県内で最も南にある円筒分水。
安房中央ダム(丸山湖)からの水を嵯峨志の円筒分水が受け止めこの滝の谷に分水され取水。
下の写真の奥のトンネルが嵯峨志からの「第二号幹線用水路」。トンネルを出たところで水はすとんと下に落ちで、サイホンで円筒分水に上がって来ます。
そして第2号(大井、水玉、安東、二子、加戸、山本の8分水へ)、第3号(原、中の3分水へ)、第4号(山王、吹代、加茂、芳賀の4分水へ)と3幹線を通じて広範囲に水を分水する働き者の円筒分水です。
(*中央学院大学社会システム研究所 佐藤寛教授著『円筒分水の研究』(成文堂)掲載の「安房中央地区用水系図」を参考に非常に雑に作成。)
(左)第二号幹線トンネル (右)第四号幹線トンネル
オフシーズンで水は流れていませんでしたが、そのおかげでこの分水もオリフィスの穴が円形であることを確認できました。「南千葉様式」?とでもいえる、引き締まって少し円筒が高めのな「嵯峨志」「滝の谷」「滝山」の3兄弟(3姉妹?)ですの一人です。
ひっそりと林の中にたたずんでいる姿に、とても惹かれます。
農産物
館山市は温暖な気候を有効に活用した早場米産地として有名です。品種はコシヒカリが最も多く全体の6割以上を占めています。
その他「ひとめぼれ」、千葉県が開発した「ふさおとめ」、それを基に2006年に生まれた「ふさこがね」、そして2020年に千葉県が13年の歳月をかけて開発した食味の良い「コシヒカリ」を母に、茎が短くて倒れにくく大粒な特徴を持つ「佐(さ)系(けい)1181」(県オリジナル品種「ふさおとめ」の子ども)を父として、人工交配により育成された「粒すけ」などがあります。
お米以外では各種野菜や、果物、花卉など色々あります。
歴史
温暖な気候に恵まれているが、河川の流域面積が少ないため十分な水量を確保できず水不足に悩まされてきた地域。
その状況の中で安房中央用水改良事業として県営灌漑排水事業申請を行い、安房中央土地改良区が1958年(昭和33年)に設立された。当該事業は安房中央ダム建設や基幹用水路の配備も含みこの地域の用水施設の整備に貢献している。滝の谷円筒分水もこの事業の中で作られた。
データ
名称:滝の谷(たきのやつ)分水工
住所:千葉県館山市竹原
方式:オリフィス式、
水源:安房中央ダム(丸山湖)から嵯峨志分水工・第2号幹線を経て取水
用水:三分水。嵯峨志からの下記3幹線に分水。
・第2号幹線(367,6ha):大井第1、第2、第3、水玉、安東、二子、加戸、山本の8分水へ
・第3号幹線(235.6ha):原第1、第2、中の3分水へ
・第4号幹線(144.2ha):山王、吹代、加茂、芳賀の4分水へ
竣工:1974年(昭和49年)と思われる(図面記載から類推)
設計:調査中
管理:安房中央土地改良区管理
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