安房中央ダム(丸山湖)からの水を南房総に配水する大切な分水工
南房総市の穏やかな田園風景の奥、養鶏場の鶏の鳴き声を聴きながら坂を上ると嵯峨志分水工に到着します。
5-6km北の安房中央ダムからの取水。背後の山に安房中央ダムからの水が通る水路の出口がありました。
「大幹線用水路・第8号隧道」と銘板が埋め込まれています。これが一挙に下にもぐって横の円筒分水工から吹きあがる構造です。
水のない時期でしたので内側が観察できました。
特徴は「円形のオリフィス(穴)」!
南千葉では同じ水源からの滝の谷(たきのやつ)、そして別系統の鴨川市の滝山の円筒分水も丸穴でした。同じ設計者なのか?
オリフィスで分水された水は、一つは第一号幹線経由、三坂千代地区の分水、そして正木地区の分水へと流れ各々の地区の農地を潤します。第二号幹線は、遠藤地区と「滝の谷(たきのやつ)円筒分水」へ。
両地区はけっこう距離があって驚きます。でも、それだけに安房中央ダム建設や基幹用水路の配備と円筒分水によって長年の水の問題が解決した当時の喜びが想像されます。
千葉県は、関東でもっとも早く水稲の収穫が始まる産地で、栽培面積は5万5,200ha、収量は30万tと全国第8位を誇る県です。稲作地帯は県内各地に広がっており、耕地面積の約6割が稲作です。
南房総ではコシヒカリ、そして千葉特有の品種であるふさこがねやひとめぼれ、ササニシキなどが栽培されているようです。
ふさこがねは粒が大きめで、粘りがあるけれどもあっさりしていて冷めても硬くならないのが特徴。「千葉6号(ふさおとめ)」と「中部64号」から千葉県で独自に開発された品種で、「千葉28号」の名称で2007年に品種登録されています。
2019年の作付面積は1万1,600haで、これは県内で作付けされている水稲の約15%を占めています。これは第1位のコシヒカリに次ぐ第2位で、うるち品種のなかでも約2割強を占めており、県内で広く栽培されていることがわかります。次回訪問では入手しなければ。
歴史
温暖な気候に恵まれているが、河川の流域面積が少ないため十分な水量を確保できず水不足に悩まされてきた地域。その状況の中で安房中央用水改良事業として県営灌漑排水事業申請を行い、安房中央土地改良区が1958年(昭和33年)に設立された。当該事業は安房中央ダム建設や基幹用水路の配備も含みこの地域の用水施設の整備に貢献している。円筒分水は1972年(昭和47年)ころ竣工したのではと思われる。
データ
名称:嵯峨志分水工
住所:千葉県南房総市山名
方式:オリフィス式
水源:安房中央ダム(丸山湖)から取水
用水:二分水。
第1号幹線(280.1ha):三坂千代、正木の2分水へ
第2号幹線(779.4ha):遠藤分水と滝の谷円筒分水へ
竣工:1972年(昭和47年)と思われる(図面記載から類推)
設計:調査中
管理:安房中央土地改良区管理
安房中央ダム/千葉県公式観光情報サイト-まるごとe! ちば-
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