円筒分水かわうそ探検隊

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深坂(みさか)ため池の円筒(扇形)分水(山口県下関市)

かまぼこ型のため池直下の扇型分水

今回の円筒分水の旅 in九州で唯一の本州の円筒(扇形)分水。
山口県の円筒分水はどちらかというと県の東側が多く、ここだけ飛地になっていました。小倉まで行くなら関門海峡を越えて山口へ行っても良いのでは?ということで本州に上陸。

深坂ため池は農林水産省の「ため池百選」に選ばれているアース式ダム。
池周辺が「深坂自然の森公園」になっていて、竜王山の登山口でもあるので、ハイキング客やキャンプのお客さんが多いです。確かにこの時期登ったら気持ちよさそうな山々。登山したいジレンマとの闘い。

湖畔には竣工した際に建てたお社がある。碑が立っていることは時折あるけれど、お社というところが、このため池建設が大事業だったことを物語っています。
円筒分水はため池直下に。円筒というか蒲鉾型という感じ。形は誰が決めているのでしょうか。

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深坂ダムの西岸には斜樋がありここで取水が行われ、底樋を通って円筒分水に吹き上がる構造です。

斜樋の横には余水吐があり溢れた水は円筒分水の横を落ちて友田川として続きます。

分水路は3本あるけれど、見学時に実際に使われているのは1本で(見学時には流れていなかった)余水吐からの水と合流して友田川へとして流れます、残りは通水していませんでしたが、西側の水路は友田川の上を越して右岸の農地を潤し、等高線をうまく通して回り込み安岡町まで潤しているようです。
東側は友田川の左岸の農地の山ノ奥、岩谷、蒲生野、妙蓮寺、三郎山、山田などを潤しているようです。深坂ため池からの水は下流の水田300haをカバーしているとの事です。

山口県で栽培されている主なお米は「コシヒカリ」、「ヒノヒカリ」、「ひとめぼれ」、「きぬむすめ」、「晴るる」、「恋の予感」など。
「きぬむすめ」は日本穀物検定協会主催の食味ランキングで最高位の「特A」取得のおいしいお米です。稲作の他、ふぐ料理や瓦そば等郷土料理に欠かせない「安岡ネギ」など畑作も盛んです。

車に戻ろうと堤の斜面を登っていたら、ビニル袋を手にキョロキョロする女性に遭遇。毎年恒例の蕨採りに来たそう。袋の中は既に大量の蕨が。

今年は豊作だと嬉しそうでした。
そう言われてみると確かに小さなクルクルの蕨の芽が斜面の至るところに生えていました。
この後の旅程を考えて泣く泣く摘むのは諦めました。

データ
名称:深坂(みさか)ため池の円筒分水
住所:山口県下関市大字蒲生野
方式:扇型オリフィス式
水源:深坂(みさか)ため池(友田川水系友田川)
用水:友田川水系友田川
竣工:1924年大正13年)?
管理:下関土地改良区安岡地区運営委員会(旧安岡土地改良区)

ダムデータ
名称:深坂(みさか)ため池
住所:山口県下関市大字蒲生野
方式:アースダム
水源:友田川水系友田川

堤高/堤頂長/堤体積:26.9m/233m/378千m3
流域面積/湛水面積 :2.7km2 ( 全て直接流域 ) /13ha
総貯水容量/有効貯水容量 :1248千m3/1248千m3
用水:円筒分水
竣工:1924年大正13年)井森工業
管理:下関土地改良区安岡地区運営委員会(旧安岡土地改良区)

深坂溜池は大きな川が無く毎年水不足に苦労してきた安岡地区で、明治の末、村の有志により河川源流部に溜池の築造が計画され、1913年(大正2年)に安岡耕地整理組合が設立され、1918年(大正7年)から溜池築造工事起工。途中1921年(大正10年)の堤体決壊という難事を乗り越え1924年大正13年)に深坂ダムが竣工しました。延べ13万人、10年の歳月、30万円(今なら30億以上)大プロジェクトでした。
稲作の他、「安岡ネギ」など畑作も盛んで、溜池は地域の農業、文化形成に大きな役割を果たしています。池には、希少種のほか多種の昆虫類が生息し、豊かな自然との深い交流ができる場所となっています。下関環境総合計画でも、市内では珍しくなったカエル、イモリなど保全すべき典型的な生態系を持つ地域として位置づけられています。