円筒分水かわうそ探検隊

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東側用水路円筒分水工(新潟県糸魚川市)

120年以上前からの用水路の歴史と共にある円筒分水。

糸魚川市の円筒分水ですが、糸魚川市には「糸魚川」という名前の川がない事をを知って驚きました。代表的な川はまず姫川、次いで早川、能生川、海川、青海川などがあります。

その早川の水系の火打山から取水する東側用水円筒分水は120年以上の歴史ある用水路のかなめの一つ、重要な円筒分水です。

訪問した時は西側の烏帽子岳(1450m)、鉢山(1575m)、昼闇(ひるくら)山(1841m)やその奥の鋸岳(1631m)などを背景に黄金色の稲穂が実る棚田が見えとても美しい風景に息をのみました。

笹倉温泉の少し上流の火打山川で取水し、円筒分水の少し上でサイフォンで落としで吹きあがらせています。

(左)火打山川の取水口から水路を通って円筒分水の近くまで来る。

(右)円筒分水の近くでほぼ垂直にトンネルに水を落としてサイフォンの原理で円筒分水に吹き上げさせる。枯葉等のゴミ除けのフィルターが設置されている。

 

湧き出した水はオリフィスの穴で2方向に分水。

一つは分水近くの大平の南のあたりから湯河内の方向に流し農地を潤しています。

 

もう一つは一号隧道(トンネル)から東側用水路への水を供給します。

この用水路こそが1879年(明治12年)に起工され、1890年(明治23年)に完工した、全長22kmに及ぶ歴史ある「東側用水路」です。

 

東側用水路は早川上流右岸の山腹に作られた農業用水路。火打山川取水口から下早川地区の要害(ようがい)集落まで全長約22kmの用水路。受益面積83ha東側用水路(1879年~1892年、明治12~25年)造成 延長22km 受益面積83ha)。

新潟県オフィシャルサイトより「糸魚川地域にある山腹用水路」引用)


明治12年に関係集落が計画を立て着工しましたが、極めて難工事であり物価の暴騰もあって時中止に追い込まれました。その後関係集落の対立や費用負担の問題を解決し、明治21年に工事再開、明治25年に完成しました。

取水口近くからずっと続く棚田に実る稲を見ると、先人の難工事のご苦労とこの用水路を守って来た歴代の方々、今の方々の事が想像され頭が下がります。


 水路の造成には当時提灯(ちょうちん)測量が用いられていたそうです。現代のように水平器で水平を出すことが困難だった時代、水を張ったタライに"見通し器具"を浮かべ、提灯の明かりを上下させることで高低差を測り、水路を造ったそうです。
 地域では先人の偉業や願いを大切にする思いから、提灯測量を再現したり、山の中腹の東側用水路をライトアップするイベントも開催しておられるとの事。「あんな高い所に」と見た方は驚くようです。ぜひ見て見たいです。

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水路のメンテナンスも重要で手のかかる仕事ですが、新潟県では『ECHIGO棚田サポーター』という制度があってボランティアの方が各地の棚田の維持に尽力されているとそうです。その一環で毎年5月、田んぼに水を入れる前にこの東側用水路の清掃作業も行われているそうです。

また秋には『水道人足』という名の地域の方の活動により地域の公共部分やライフラインの整備作業が行われているそうです。

色々な方が尽力されていて、円筒分水からの水も農地に行きわたると知り感動します。

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そんな地域の方の努力によって糸魚川のお米は生産されています。
糸魚川は「地形が生む昼夜の寒暖差」「豊富な雪解け水」「稲作に適した豊かな大地」が揃ったおいしいお米の産地。また「頚城七谷 (くびきななたに)」と呼ばれる多くの川が流れており、用水も西側用水路(18km、120年の歴史)、大山用水路(10km、170年)、釜沢用水路(10km、80年)、来海沢上江用水路(3km、5-60年)などがあります。

どこの水を利用して育てるかによりお米の味に違いがあるそうです。

特に越後頚城七谷のひとつ、この早川地区は、日本海と活火山・焼山をはじめ2,400m級の峰々に囲まれた豪雪地帯で、雪解け水と海と山から吹き抜ける清涼な風が、早川谷の美味しいお米を育てるそうです。7月・8月は10度以上昼夜の気温差があるため、お米にはとても良い環境です。山と海からの新鮮な風のおかげで害虫や病原菌などがつきにくく、新鮮な酸素を含んだ空気で呼吸をした、元気な稲に育ちます。


種類はまずコシヒカリ新潟県限定の「こしいぶき」新潟の新プレミアム米「新之助」(2017年より)など。食べ比べて見たいです。

この早川地区を眺めると、茅葺屋根の建物に金属でカバーをした独特の形の家をたくさん見ました。近年は茅を採り、屋根をふき替えるのも用意ではないので金属のカバーで覆うのだそうですが、そのカバーを外せは内側の構造は保たれたままなのでまた茅葺きにすることができるようになっているそうです。地域の方の昔からの建物への愛着を強く感じました。

円筒分水のすぐ近くには笹倉温泉焼山温泉もあり、またのんびりしに行きたいです。

笹倉温泉遠景。いいところでした。

 

データ

名称:東側用水路円筒分水工分水
住所:糸魚川市大平 中川原新田
方式:スリット式2分水
水源:早川水系火打山川東側用水
用水:東側用水路
竣工:1960年(昭和35年
設計:調査中(木島組?)
管理:糸魚川市土地改良区

リンク

糸魚川市土地改良区

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糸魚川

www.city.itoigawa.lg.jp

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